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『世界樹の迷宮』シリーズ雑記。HPのごたごたも
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せかご自ギルドが結成されるまで

【前の】


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 黄昏亭に足を踏み入れてみた、セランの目に飛び込んできたのは、樹海鶏の照り焼きにかぶりつくモズの姿だ。
 呆れながら、彼女がいるテーブル席に近づく。すると、モズの正面に座すルナリアの女性が振り返ってくる。
「あら?」
『セランなのじゃ』
『なのじゃ、じゃないよ。何やってんだよこんなところで……』
 きょとんとしている、優しそうなルナリアの女性に、セランは愛想笑いを浮かべた。
「すみません、連れがご迷惑を……」
「あっ、もしかしてこの子のお友達? 良かった! 言葉があんまり通じないから、きっと迷子だと思っていたのよ」
 おなかが空いているみたいだったから、と、その親切な女性にモズは食事をごちそうになっていたらしい。あなたも座ってと促され、財布を忘れてきたセランは頭を掻く。
「僕までごちそうになるわけには……」
「いいのよ。こんなにかわいいお友達が二人も出来たんですもの。嬉しいわ」
 リスのほお袋のように膨らんだモズの頬を、女性はつんと突ついた。
 彼女の言葉に甘えて、モズの隣に座したセランは、改めて名乗った。
「僕はセラン・ピート。この見かけはブラニー族の血を引いているからで、一応成人しています」
「マクレガーと呼んでちょうだい。よろしくね、セラン君。かわいいと言ったのが失礼だったなら謝るわ」
 目が合ったルナリアの彼女―――マクレガーは、にこりと笑った。
「でも、本当にそう思ったんですもの」
「……こっちの意地汚いのはモズといいます」
 猪肉パスタのミートソースで口の周りを茶色に染めたモズを横目に、マクレガーは答える。
「ええ、名前は聞いたわ。でも、あとは探し物をしているということしか分からなくて」
「その『探し物』は僕たちのことです……あともう一人、連れがいて」
『フェイは?』
『宿にいるよ』
 ちゅるんとパスタを吸い込むと、モズは憤然として言った。
『わらわがこんなに苦労して、探してやっていたというのに! ただではおかんぞ。この前みたいに、靴下にどんぐりしこたま詰め込んでおいてやるのじゃ』
『わあ、可哀想なフェイさん……』
 そこで、セランはモズの頭からセリアンの耳が生えていることに気づいた。
『……どうしたの、その耳』
『これ? マクレガーが生やしてくれたのじゃー……アッ、そうじゃ! 角を隠さなかったおかげで酷い目に遭ったのじゃ! 文句を言うてやろうと思って―――』
「マクレガーさん、この、モズの耳は?」
 きゃんきゃん吠えるモズを無視して、マクレガーに水を向ける。
「魔法で形を変えているだけよー。心配は要らないわ」
 セランは目をぱちくりとした。話に聞いたことはあるが、実際に見るのは初めてだ―――ルナリアの魔法使い。
 マクレガーは、不思議な文様が刻まれた、剥きだしの肩を竦めてみせた。
「そんなに大した魔法ではないの。……それより、角の生えた子なんて初めて見たわ。あなたはブラニーだし。西方の出?」
「ええ、まあ……」
「ねえ、あなたたちももしかして、冒険者なの?」
 不意にマクレガーがそう尋ねてきた。
 セランがどう答えようか迷っている間に、モズが身を乗り出す。
「冒険者なのじゃ!」
「その単語は覚えてるんだ……」
「あら、そうなのね」
 マクレガーは両手を打つ。
「―――ねえ、お願いがあるのだけど。あなたたちのギルドに、私も入れてもらえないかしら?」
「えっ」
『何じゃって?』
 通訳してやると、モズは再び身を乗り出し、
「ようこ―――ぐえっ」
「ごめんなさい、僕たちはまだ冒険者登録をしていないんだ。この街には今日着いたばかりで」
「いいわよ。私もそうだから」
 紅茶をすすりながら、マクレガーは微笑みを崩さない。この店も同胞がやっているようだったから入っただけですもの、と続ける彼女は、見た目や態度の淑やかさに反して、意外と強かなようだ。
 押し切られる前に。セランは肩を竦める。
「僕らのリーダーは他のところにいるから。彼に相談しないと」
「いいわね。ぜひご挨拶をしたいわ。あなたたちのリーダーなら、きっといい人だと思うもの」
「いい人はいい人だけど……」
 上から下まで、マクレガーを眺める。褐色肌のルナリアはまれに見る。スレンダーな長身で、はた目から見ても美人だが、冒険にはあまり向いていなさそうな気もする。
「マクレガーさんは、どうして冒険者に―――」
「おーい、手を貸してくれ!!」
 入り口のドアを肩で開けながら、男が同時に店に転がり込んできた。
 唐突な訪問に、何事かと注目が集まる。男が抱えていたのは、気を失っているらしい青年だ。
「―――冒険者狩りだよ! また出たらしい」
「冒険者狩り?」
 物騒ねーと首を傾ぐマクレガーをよそに、セランはぴょんとブラニー用のクッションから飛び降りると、人だかりに向かう。
「大丈夫? 診るよ」
「何だ何だ、ガキはあっち行ってろ」
 案の定追い払われそうになり、セランはムッとして、紋章入りのタイピンを掴む。
「僕は薬草師だよ! いいから、そっちこそどいて!」
 青年の診察を始めるセラン。
 ほとんど一撃で気を失ったようで、目立った外傷はない。命に別状もなさそうで、ミントでも口に突っ込めば、何事もなかったかのように目が覚めそうだ。
 気になったのは、おそらく財布や武具がぶら下がっていたであろう、剣帯が刃物で斬り取られた痕跡だ。
『セランも大概お節介じゃのう』
 モズとマクレガーが、いつの間にかセランの背後でしゃがみ込んでいた。
 さらに人ごみを掻き分け、眼鏡をかけた色黒のルナリアの女性が近寄ってくる。周りとのやり取りの様子からして、この店の女将らしい。
「その人のお加減は?」
「特に……ただ寝ているだけじゃないかな。冒険者狩りって大げさだけど、つまりは物盗り?」
「そうよ。被害者は冒険者ばかりだから、“冒険者狩り”」
 ただ、と、女将は悩ましげに嘆息する。
「―――狙われる冒険者も、こう言ってはなんだけど、難アリの子たちばかりだから……この子も前にうちの店で乱闘してくれたり、依頼人に暴力を振るったりしてくれた子だわ。……アイオリスは急に冒険者が増えて、治安が悪くなっている面もあるのよ」
 女将の目がすっと細く、声が低くなったので、セランは口角だけを上げた。
「へ、へえ」
「でも装備やお金を奪われたら、冒険者をやっていくのは大変よ」
 ぽつりと呟く女将。
 青年の額を撫でて、女将はギャラリーに「誰か宿に運んであげて」と呼びかける。
 お役御免のセランは、モズたちと共にテーブル席へ戻る。ふと、先ほど迷い込んだスラムでの出来事が思い出されていた。
 スラムで出会った彼らは、冒険者を食いものにしていた。冒険者狩りもそうだ。だけど、暴力を振るうなど、冒険者側にもきっと、街の人々が不満を抱くだけの原因はあるのだろう。
 あらためて自覚する―――かつてはアイオリスの住民に近かったセランも、今は冒険者の立場なのだ。
 たった数年なのに、とても遠くに来たような気分だった。
―――物思いに沈みかけたセランの鼻先を、指が弾く。
「いてっ」
『何をぼんやりしておるのじゃ』
 眉をひそめると、モズが目をぱちくりとした。
『―――そろそろ宿に帰るかの。おなかもくちくなったのじゃ』
「マクレガーさん。良かったら、宿まで送ります」
「まあ」
 セランの申し出に微笑むマクレガー。
「―――ありがたいけど。その前に、あなたたちのリーダーにご挨拶がしたいわ」
 忘れてなかったか、とセランはひっそりと目を細める。
「……分かりました。じゃあ、僕らの宿まで案内します」
「ありがとう」
『む? マクレガーもついてくるのじゃ?』
 モズが嬉しそうに耳をぴんと立てる。短い間に、モズはマクレガーにすっかり懐いたらしい。
(まあ、悪い人じゃなさそうだし……)
 街に着いていきなり、人攫いに捕まったセランは、少々神経が過敏になっているのかもしれない。それに、マクレガーはモズを保護してくれたのだ。
 フェイは、マクレガーの申し出をきっと受け入れるだろう。そんな予感もあった。
―――闇色に溶けそうなアイオリスの街を、セランを先頭に、三人は歩き出した。
 春とはいえ、夜になってしまえば肌寒さを覚える。上半身にほとんど布がないモズや、肩を出しているマクレガーは寒くないのだろうかと振り返れば、二人は何か楽しそうに談笑していた。
「モズちゃんとセランくんがとってもかわいらしいから、リーダーさんは厳つい方なのかしら?」
『おなかがいっぱいだと、眠くなってくるのじゃー』
「ふふ、もしかして女の人?」
『アイオリスは美味いものがいっぱいじゃのう』
(全くかみ合ってないし……)
 呆れながら、視線を正面に戻した―――刹那。
 目の前を、鋭い風が通過していった。
―――思わず立ち止まったセランの眼鏡を掠めて、右側の家の壁に何かが突き立つ。
 街灯に照らしだされるのは―――小さな矢だ。
「どこ狙ってんだ、馬鹿!」
 唖然としていたセランの耳に、ひそひそと小声が届く。
 矢が飛んできた方向の狭い路地に、誰かがいる。
―――見覚えのある二人組だ。
「どうしたの?」
 マクレガーの言葉に応じず、セランは立ち止まり、彼らを凝視していた。
 アースランとブラニーの二人組の彼ら―――裏路地で出会った人攫いたち―――は、向かいの路地を指さして何かを話し合いながら、頷き合うと、路地を引き返していく。
「セラン!」
 気づけば、セランは駆け出していた。
―――何か、胸騒ぎがしたのだ。
 狭い路地に入り込んだ瞬間、身体が浮き上がる。
 振り返れば、モズが片手でセランの首根っこを掴まえていた。抗議の声を上げると、憮然とした視線が返る。
『突然何なのじゃ? 走り出したりして』
「そっちは裏通りよ? 治安の悪いところに宿があるのね」
 呑気に、セランが入ろうとした路地を覗き込んだマクレガーの切れ長の目が、不意に見開かれた。
「あら……」
 マクレガーの視線を追ったセランとモズは、大きく息を呑んだ。
 紺色の闇が落ちる裏路地は、めくれ上がった舗装や汚物がそのままに残されている。その上を、己の身体を引きずるように、人間大程の肉塊が動いていた。
―――チカチカと消えかかる街灯に照らし出されて、肉塊が姿を露わにする。
 それは、毒々しい青色をした芋虫だった。
 頭の先端に二本の触角のような、鋭い牙が生えている。全身をうねらせて、芋虫は何かを探すように、首を振った。尾側にいるセラン達のことには、気付いていない。
 息を詰めていれば、芋虫は図体を思わせない素早さで、這うように闇の中に消えていく。
「な、な……」
『魔物なのじゃ!』
 分かりきったことを、耳をぴんと立ててモズが言う。
「アイオリスの街中には、魔物が出るのね」
「ンなわけないでしょ……」
 のんびりと零されたマクレガーの言葉を否定し、セランは裏路地の隅っこにこそこそと引っ込んで行こうとしている、例の二人組を向いた。
「あんたたち、あの魔物は何なんだ?」
 肩を震わせ、ブラニーの方が振り返る。
「し、知らねえ」
「知らないってことはないでしょ。さっき、弓矢を射ってたのは、あいつに当てようとしてたんじゃないのか」
 ブラニーと髭のアースランは顔を見合わせる。
 やがて、ブラニーがおそるおそるというように口を開いた。
「そ、そうだよ……」
「商品が逃げちまったのさ」
 開き直ったように、髭が肩を竦めた。セランはすぐ眉根を寄せる。
「商品? 生きた魔物の取引は……」
 違法では、と言いかけて、無駄であることを悟ってやめた。こいつらはぶつかっただけのセランを攫って売り払おうとした連中だ。
「それで、あの子はどうするの?」
 特に慌ててもいない声で、マクレガーが呟いた。
―――裏路地にも人がいないわけではない。じき、魔物に気づく者はセランたち以外にも出てくるはずだ。
「とりあえず、衛士に通報しないと」
「お、おい! そんなことすりゃ、俺たちがお縄になっちまう!」
「自業自得だろ」
 冷たく言い放つセランに、「まあ待てよ」と髭のアースランが口角を上げる。
「衛士に知らせたりなんかすりゃ、ここいら一帯大騒ぎだ。下手をすりゃ、ガサ入れを食らうだろうな。お前たち冒険者のせいで、ってことになるぜ」
「そんな……」
 アースランは目を細めた。
「近頃流行ってる、冒険者狩りがもっと苛烈になりかねねえなあ」
 その言葉にハッとする。
―――こいつら、冒険者狩りの仲間なのか。
 もしくは、冒険者狩りに近しい何かだ。警戒を露わに睨みつけるセランをよそに、マクレガーが告げる。
「大ごとにならないうちに、あの子を倒してしまえばいいってことかしら」
「そうだな。出来れば、生け捕りだ」
「それは難しいわねえ……」
 言いつつ、マクレガーの肩口が赤紫色に光る。
 光が走った道筋をなぞるように、赤黒い筒が現われる。肩口の紋様から生えた筒は、マクレガーが手にした錫杖に辿り着くと、錫杖の先端から光の刃が形成された。―――見るのは初めてだが、これが、恐らくルナリアの使う魔法というものだ。
「マクレガーさん」
 臨戦態勢になったマクレガーを非難するように、セランが声を上げれば、長身の彼女はにっこりと微笑む。
「どのみち、衛士を呼びに行っている時間はなさそうだもの」
 ずるずると。
 石畳の上を、重いものを引きずるような音が闇の中に響く。先ほど見た芋虫の魔物が、再びこちらに向かってきているらしい。
 ブラニーが懐から、手のひら大の鳥かごのような形状をした入れ物を取り出した。中に何か入っている。
「魔物寄せの香だ。あいつは目も頭もよくねえから、コイツで十分」
 先ほどは、ブラニーが攻撃を仕掛けたから逃げたようだが、また香に引き寄せられて戻ってきたということだろう。
「捕える手立てはあるのか?」
「ケージがあるんだ。そこまで追い詰めれば……」
―――言い終わらぬうちに。
 突然、頭上から爆発音が響いた。
 刹那に赤い炎に照らし出される裏路地一帯―――あんぐりと口を開けたセランに、先手必勝と言わんばかりに杖を掲げたマクレガーが、頭上を見上げる。
「あら」
 間の抜けた声に応じるように、何かが降ってくる。
 その黒い―――そう、黒い何かは、ずしゃ、とセランたちの眼前の地面に着地する。ぶすぶすと、マントに燻る火を転がって消し、肩で息をしながら、それは立ち上がった。
―――こいつにも見覚えがある。
 昼間に会った、不審な黒づくめだ。
 怒りに燃えた赤い目が、キッとマクレガーを見た。
「あんたなァ! いきなり何しやがる!! 殺す気か!!」
「あら、ごめんなさい。てっきり気配で魔物かと」
「ンなわけねーだろ!」
 魔法の火であちらこちらが焦げている。よく無傷で済んだものだ。
 もう一度目をぱちくりやると、セランは前方の闇を指した。
「マクレガーさん、あの魔物は芋虫だったから、空は飛ばないと思うよ」
「ええ、そうね」
 当然だと言わんばかりに頷くマクレガーに、セランは口角を引き攣らせた。
『お前は何なのじゃ?』
 すんすんと鼻を鳴らしていぶかるモズに、後退しつつ黒づくめは顔をしかめる。
「ゲッ、冒険者……と、お前らは」
「テメー、カーリグ!」
 髭のアースランが、黒づくめに詰め寄った。焦げ臭い襟首を掴んで、がなり立てる。
「―――ちょうど良いところに来た、何とかしやがれ!」
「ハア? 藪から棒に、テメーら何なんだよ」
「魔物が脱走したそうよ。かわいい芋虫さん」
 マクレガーの目には一体何が映っているのだろうか。彼女の言葉に、黒づくめはますます渋い顔になる。
「芋虫って……FOEの幼虫か?」
「そう、お前が捕まえてきたやつだよ!」
 髭がそう言うので、セランは合点がいった。
―――なるほど、あの魔物を捕まえたのは黒づくめで、人攫いコンビはその面倒を見ていただけなのだ。この二人には魔物を捕えるだけの能力がなさそうだったため、疑問に思っていた点が腑に落ちる。
 が、黒づくめはぱしりと、髭の手を払う。
「知らねーよ。俺は金で依頼されて捕まえたってだけだ。お前らに引き渡した時点で依頼は完了してる」
「ンだと……」
「脱走したヤツをもう一度捕まえろっつうなら、別料金だな」
 人差し指と親指を丸くくっつけて、指先を摺り寄せる黒づくめに下卑た笑いが浮かぶ。
「セラン」
 頭巾を引いてきたモズが、こそこそと耳打ちしてくる。
『あいつ、においがするのじゃ』
『におい?』
 醜く揉めるアースランたちを尻目に、モズは小さく頷く。
『さっき酒場に転がり込んできた奴のにおいじゃ』
 それは―――モズが言っているのは、冒険者狩りの被害者の男のことだ。
 その“におい”をさせているとなると。
「……冒険者狩り」
 セランが呟いた単語に、黒づくめが反応する。
 悪びれもなく、口角に浮かんだ笑みに、ふとセランは確信した。
 コイツが―――冒険者狩りだ。
 腕に自信があるのだろう。黒づくめはセランから視線を逸らせ、正面を見据える。
「来るぞ」
「お前―――」
「セラン君」
 透き通るようなマクレガーの声に、セランは彼女を振り返る。
 笑みを張りつかせたまま、彼女は続けた。
「さがっていなさい」
「……分かった」
 辛うじて予備薬を持ってはいるが、今のセランはほとんど丸腰だ。いや丸腰でなくても、魔物との戦闘でセランが役に立つことはほとんどない。
 セランと同じように、ブラニーが怯えた顔でさがる。髭面のアースランも同様にしたので、街のチンピラと言えど魔物との戦闘経験はないのだろう。
 居並ぶ面子の中で、セランが実力を知っているのはモズだけだ。彼女の刀を操る腕はけして低くはないだろうが―――ずば抜けて高くもない、と思う。
 後の二人。魔法使い(ウォーロック)のマクレガーは、酒場の話では旅をしてきたと言っていたから、魔物相手の立ち回り経験はあるのかもしれない。一方―――黒づくめは。
「おい」
 剣を抜くと、彼は隣に立つモズに声をかけた。
「―――街中の装備だから本気は出せない。あんたらの力も借りるぞ」
『何じゃと?』
『モズとマクレガーさんにも、一緒に戦ってくれってさ』
 セランが大声で通訳する。黒づくめは眉を上げた。
『冒険者狩りなどする卑怯な輩の力など要らん! 引っ込んでおれ!』
「なんつった? ったく、めんどくせえ連中だな」
「あんた、冒険者狩りだろ?」
 セランを振り返った黒づくめに、冷たく言葉を投げる。
「―――信用できない」
「しなくていいさ。俺は商売でここに立ってるだけだ。安心しろ、人数で折半する」
「そういうことを言ってるんじゃ―――」
「来るわよ」
 マクレガーの静かな声と同時に、二人の間に稲光が走る。
 走り過ぎたそれは、暗闇に刺さる―――魔物の悲鳴だ。
 それを合図にしたかのように、モズが駆け出す。
「深追いはしちゃダメよー」
 のんびりとしたマクレガーの声を聞いているのかいないのか、モズは雄叫びを上げると、闇に突っ込んでいく。
「元気ね」
 マクレガーの杖が光を発した。
 次は、炎―――魔法が律する三属性のうち、この魔物に効果的な属性を見極めようとしているのだろうか。炎の塊が直撃した魔物は、先ほどよりも甲高い声を上げて、身体をくねらせる。表皮に灯った魔法の火が、その全貌を明らかにした。
 マクレガーの狙いは正確だが、モズが魔物にまとわりつくため攻撃を続けにくいようだ。
「てえい!」
 モズが頭上目がけて刀を振り下ろす。
 柔らかい表皮を打ち据える前に、頭頂の二本の角に絡め取られたそれは、モズが飛び退くより早く弾き飛ばされる。彼女が尻餅をついた瞬間、芋虫が首を大きく掲げた。
「モズちゃん!」
「モズ!」
 避けきれなかったモズの腕を、芋虫の牙が掠めた―――目を見開いて、モズが倒れ込む。
「チッ」
 舌打ちして、黒づくめが前に出る。芋虫の注意を引こうとしていることに気づいて、セランはブラニーと髭の二人組を振り返る。
「モズを退避させるのを手伝―――」
 が。
 そこにいるはずの二人組は、既にいなくなっていた。逃げたのだ。
「あいつらっ……」
 いない連中を詰っている暇はない。モズから芋虫が離れたことを確認すると、セランはモズに走り寄った。ぐったりと石畳に横たわるのは、怪我のせいだけでは恐らくない。
「毒……」
 鞄を探る。あり合わせの薬草しかなかったが、解毒作用のあるものを幾つか見つける。薬草は一種類では効果が薄くても、複数種類組み合わせて服用することで回復速度が上がったり、強力になるものなのだ。
「これと、これと……えっ」
 手元を覆い隠すような影が唐突に落ちて、セランは頭上を見上げた。
 薬草の選別に夢中になっていたうちに、芋虫がセランを見下ろしている。
「う、うわあああっ!」
 慌てて、モズから離れるように、接近してくる芋虫の頭を避ける。芋虫が自分を追ってくるので、薬草をまき散らしながらセランは慌てた。
「な、な、なんで―――っ」
 ふと、腰に結わえられた入れ物に気づいた。魔物寄せの香だ。
―――あいつら。いつの間に。
 今度会ったら毒殺してやると固く心に誓いながら、セランは香を結ぶ紐を解き始めた。手元が震えて、上手くほどけない。そのうちに、再び魔物が近づいてくる。
「うわ、わああっ」
 武器のないセランは、ブラニーの小柄な体を生かして、ちょこまかと逃げるのに必死だ。
 魔物は俊敏だった。無茶苦茶に避けているうちに、逃げ場のない、建物の壁際まで追い詰められていることに気づく。
「セラン君!」
「しまっ……」
 振り返れば、芋虫の口が間近に迫っていて。
 セランは、腕で顔を覆った―――その時。
―――炸裂音と同時に、魔物の尾が破裂する。
 名状しがたい色の体液が、暴れる魔物の周辺にまき散らされる。呆然としていたセランの耳に、聞き覚えのある凛とした声が響いた。
「セラン、モズ!」
「フェイさん!」
 遠目に分かる、赤コート。
―――駆けてくるその姿を見たとき、安堵が心に広がるのを感じた。
 近づけないのか、痛みにのたうち暴れる芋虫の背側で立ち止まったフェイに、セランは目を瞬かせる。
「な、なんでここに……」
「説明は後だ。モズを頼めるな?」
 彼が視線を投げた先のモズに、セランは慌てて飛びついた。
 モズの呼吸は落ち着いていた。最初に処方した、毒抜きの薬草が効いてきたようだ。冷静になってきた頭に、続けて順繰りに与えるべき薬草が浮かんでくる。
「う、うん!」
「よし。―――あんたたちは? 味方か?」
 フェイは、芋虫を足止めする黒づくめと、その援護をしていたマクレガーを向いた。体力を消費しているのか、弱々しく頷くだけで応じる二人に、フェイは芋虫を回り込みながら、続けて呼びかける。
「俺も加勢する。魔物を引きつけるから、継戦を」
 セランたちにまで辿り着くと、フェイはセランの腰に付いた、香入れを乱暴にナイフで引きちぎった。
「何でこんなもん付けてたんだ?」
「そ、それも説明はあとっ」
 不思議そうに言うフェイは、香を持ったまま走り出し、笛を鳴らす。
 魔物は、まるでそれに釣られるように首を動かす。尾を破壊され、思うように動けないようだが、香と魔物寄せの笛の効果は絶大なようだ。その背に炎が突き刺さった。燃え上がる爆炎と、魔物の悲鳴。
 魔物の動きは衰えていた。最早のろのろとくねるしかない身体に、追い打ちのように炎の魔法が放たれた。体液が流れているせいなのか、ちりちりとその表面が燃えやすくなっているようにも見える―――いや。
 微かにだが、芋虫の表皮を覆うように、黒く燻る靄が見える。初めは黒煙かと思っていたが、それは不気味に表皮の周りにだけにとどまり、立ち上る気配がない。
 モズの処置を終えたセランはハッと、黒づくめを見た。
 外套の頭巾を外していた彼の目は、遠目からもはっきりと分かるほど、赤く爛々と光っていた。覗き見ただけで、心に不安が宿るような光だ。風もないのにはためく外套を押しあげるように、背中にうっすらと、表皮に見えたのと同じ黒靄が立ち上っている。
 どうやら、彼が魔物に何か術をかけているのだ、とセランは理解する。
―――黒づくめの瞼が閉ざされた。
 か細い鳴き声―――まるで助けを求めるかのような、断末魔―――を残して、どう、と芋虫は地面に倒れ伏す。
 戦っていた三人が、一様に疲れたような溜息を吐いた。
「……倒した、の?」
 フェイが芋虫に近づいていって、検分すると、大きく頷いた。
 それを見て、セランもほっと息を吐く。
「モズの容態は?」
「問題ないよ。今は眠ってる」
 むにゃむにゃ言ってる少女を横たえて、セランはフェイに歩み寄った。
「―――フェイさんが来てくれて助かったよ」
「セランたちがなかなか戻ってこなかったからさ。捜していたら、魔物がどうのこうのって聞こえて。そっちの方に行ったら、本当に街中で魔物が暴れてるし、セランとモズがいるし」
「はは……やっぱり、騒ぎになってたんだ」
 じき、ここにも衛士が辿りつくだろう。―――「ウッ」という声と稲光が視界の隅に見えて、セランは驚いて振り返った。
「ま、マクレガーさん?」
 マクレガーの足元に、黒づくめが膝をついている。
 マクレガーが持つ杖の光が消える。彼女は平然と答えた。
「逃げられたら困るでしょ? 大丈夫、手加減はしたわ」
「て、めえ……」
「だって、冒険者狩りをしていたのはあなたなんでしょう? 詳しく事情を聞かせてもらわないと」
 脂汗をかいて己を見上げる黒づくめに、マクレガーはにっこりと笑う。
 セランは乾いた笑いを浮かべた。


 予想通り現れた衛士の詰所に連れていかれ、互いに軽く自己紹介を済ませた後、黒づくめの尋問が始まった―――どうやら、あの人攫いどもとは知り合いながらグルだったわけではないらしく、依頼として例の魔物を捕えて引き渡した後については、知らないと言う。人攫いに逃げられたことにも、「タダ働きかよ」と憤っていた。
 一方で、『冒険者狩り』については―――あっさりと認めた。
 詰所の一室、椅子に座った状態で後ろ手を縛られた黒づくめは、取り囲むセラン達四人に対し、悪びれもなく言う。
「お前ら冒険者こそ、街の人間に暴力を振るったり、仕事を奪ったりしているだろうが」
 セランの予想していたどおりの理由を、黒づくめは答えた。
 アイオリスは街をあげて、冒険者の入植を歓迎している。勿論荒事を起こした冒険者は罰されるはずだが、表ざたにならないような揉め事も、きっと多いのだろう。新たにアイオリスを訪れる人々を、見守ることと野放しにすることは違う。だが、その線引きは、急激に成長を遂げるアイオリスにとっては難しいのかもしれない。
「俺はその中でも、特にロクでもねえ連中を、金で雇われて始末してるだけだ。かといって、殺してもいねえよ」
「無茶苦茶だな」
 反省の色が見えない黒づくめに、フェイが呆れたように言った。
「それだけの力があるなら、他にやれることもあるだろう」
「あったさ。だが、今言ったろ。お前ら冒険者が全部、仕事をパチっていきやがる」
「なら、お前も冒険者になればいい」
「ハッ、冗談言うなよ」
 鼻を鳴らす黒づくめに、フェイは意味が分からない、というように眉をひそめた。
 代わりに、口を開いたのはマクレガーだ。
「『瘴気使い』ね」
 険を含んだ黒づくめの赤い目が、マクレガーを睨む。
「その、瘴気使いって?」
「文字通り、瘴気を操る一族のことよ」
『瘴気っていうのはね……宗教的には穢れとも呼ばれて嫌われているんだ。実際は、魔力が濁ったものとか、魔物を生み出す素とかいう話だけど、はっきりしない。ただ、生き物には大体毒になる』
 セランの説明に、フェイは眉をひそめた。
―――瘴気使いは、先天的に己の身体から瘴気を生み出す力を持った人々のことを指す。アースランの社会に属するが、一般的には忌避される対象だ。
『あんまり……ギルドを組みたがる人はいないんじゃないかな』
 フェイは押し黙っていた。
 そこへ、衛士隊の隊長がやってきた。逃げた二人組はまだ捜索中だということだけ告げ、彼はセラン達を見渡す。
「街に魔物を放つなど……一歩間違えれば大惨事になるところだった。冒険者諸君の助力に感謝する」
「いいえ」
 マクレガーが応じる。まだ冒険者登録をしている者は一人もいないということは、話していない。
「―――それで、この黒づくめさんはどうなるの?」
「余罪次第だ。しかし……追放は免れないだろうな」
「げっ」
 ここで初めて、黒づくめの表情が慌てたような色に変わる。
「追放って……アイオリスから?」
「そうだ。こういう手合いは多くてな。……いちいち牢獄にブチ込んでいられんのだ」
「そりゃねーぜ! 魔物から街を守る協力もしてやっただろーが」
「それにしても、犯罪者を野放しにするわけにはいかん。冒険者狩りなどもってのほかだ」
 今更のように歯ぎしりする黒づくめに、セランはわずかに同情した。
 あの二人組と同じように、黒づくめも、逃げようと思えば逃げられたはずだ。だがそうしなかった。金で雇われたからというのもあるだろうが、いずれ衛兵が駆け付けるのを分かっていて逃げなかったのは、魔物から街を守る意志を優先したからだろう。
「……じゃあ、野放しにしなければいいんだな?」
 言葉を発したのはフェイだった。
「―――彼を、俺のギルドで引き取ろう。そういうのはどうだ?」
「はあ!?」
 素っ頓狂な声を上げる黒づくめをよそに、フェイは隊長から視線を外さない。
「冒険者をやれば、狩られた側の気持ちが分かるだろ。更生するまで監視を兼ねて、面倒を見る」
「それは……当の本人はどうなんだ」
 反発心むき出しで威嚇している黒づくめに、フェイは冷ややかに言う。
「嫌なら、大人しく追放されるだけだな」
「ぐ……」
「えっ、本当にギルドに入れるつもりなの?」
 思わず聞いてしまったセランに、フェイは事もなさそうに答える。
「別にいいだろ?」
「え……あっ……いや、それを決めるのは僕じゃない、と思う、けど……」
 歯切れの悪さを肯定と取ったのか、フェイはただ肩を竦めるだけだ。
「で、どうするんだ?」
 眉根を寄せて睨みつけながらも、無言に徹する黒づくめ。
 フェイはにやりと笑うと、その腕を縛っていた紐を解いてやった。右手を差し出す。
「フェイだ」
「……カーリグ」
 黒づくめ―――カーリグは、忌々しそうに己の名を吐き捨て、その手を払う。
「一件落着かしら?」
 首を傾いだマクレガーに、フェイが答える。
「あんたにも迷惑をかけたな」
「いいえ。もしよければ、私もあなたたちのギルドに入れて欲しいのだけど」
 その言葉に、ぎょっとしたように目を剥いたのはカーリグだった。爆破されたり雷撃を食らわされたりと、ロクな目に遭っていないからだろう。
 にっこりと、彼にマクレガーは微笑んでみせる。逆効果だろうとセランは思った。
「いいぞ」
 そして予想していた通りの答えを、フェイは口にする。
―――セランは何となく、どっと疲れた気分だった。
『わらわ眠たいのじゃー。早く帰りたいのじゃー』
 モズがセランの気持ちを代弁してくれる。
―――こうして、久しぶりのアイオリスの夜の騒動は一段落となった。


「良かったの?」
 宿への帰り際、とっぷりと更けた夜闇の中、ゆっくりと歩くフェイの横顔に、セランは疑問をぶつける。
「何がだ?」
「出会ってすぐの他人と、ギルド組んじゃって」
 マクレガーはさておき、カーリグは明日、集合場所の冒険者ギルドに現れるかどうかも不安だ。が、フェイはのんびりと答えた。
「まあ、なるようにしかならないし」
「どうせ、勢いで決めたんでしょ」
「それもあるが……さっき戦ったとき、二人とも相当実力者だった。あと、戦闘での相性っていうのかな……言葉で言い表せないけど、多分彼らとなら上手くやっていけるだろうって思ったんだ」
「ふうん……」
 戦闘に関して、セランが口出しできることはない。ふと、くしゃりと髪を撫でられた。
「モズのことを診てくれてありがとう」
「……それくらいしか、出来ないから」
 ぶっきらぼうに応じたものの―――正直なところ、セランは道具も心構えも足りなくて、己の職務を放棄して、魔物から逃げそうになった。
 くじけそうな心が冷静さを取り戻したのは、フェイが来てくれたからだ。
―――戦う力がないのは、最初から分かりきっていたことだ。だが、それがどういうことなのか、理解が足りなかったということを痛感した。
 黙り込んでしまったセランに、フェイはさらに言葉を降らせる。
「回復役は、戦いの要だ。きみが落ち着いて自分の仕事に集中できるようにするには、何が大切だと思う?」
「僕が……ちゃんと周りを見て、冷静になること……」
「そうだな、それも大事だ。だけどもっと大切なのは……一緒に戦う仲間を信頼することだよ」
 フェイはにっと笑う。
「―――大丈夫。あの場で戦うことを諦めなかった連中だ。きっとうまくやれるさ」
「……そうだと、いいけど」
 ちりと、胸の内側が痛んだ。 
―――守られるだけの自分が、本当に冒険者としてやっていけるのだろうか。
 そんな不安を見透かされたような気がしたのだ。
(一緒に戦う仲間を、信頼すること)
 ふにゃふにゃと今にも寝そうなモズの腕を引っ張るフェイを見ながら、セランは大きく息を吐いた。
―――少なくともフェイたちを、信頼することはできる。
 そしてフェイが信じろと言うのなら、マクレガーもカーリグも、信じることができるはずだ。


 問題の翌日。
 なんと、カーリグは時間きっかりに現れた―――一方で、例の黒外套は頭からすっぽりと被っていたが。
「あなたがちゃんと来るのは、意外だったわー」
 誰もが思っていたであろうことを正直に口にしたマクレガーに、カーリグは噛みつくように答える。
「俺だって、来るつもりなんざなかったっつーの」
「じゃ、どういう風の吹き回し?」
―――曰く。
 逃げた二人組の口が軽かったのか、はたまた魔物退治の様子を見ていた者たちがいたのか、カーリグが衛士に捕まったことは、瞬く間に裏界隈のチンピラの間で広まったらしい。
 要するに、衛士に面が割れたカーリグに、後ろ暗い依頼は一晩で回ってこなくなった―――このままいけば食い逸れるのは確実だろうというほど、もうすっぱりと。
「お前らのせいだ」
「良かったじゃない、表通りを歩けないような人たちとは縁が切れて」
「そういう問題じゃねえ! ……いいか、勘違いすんなよ。仕事がなくなったから、一時的に付き合ってやるだけだ」
「はいはい」
 言い合うカーリグとマクレガー―――もっとも、マクレガーの方は相手にしていないようだったが―――を傍目に、セランはきょとんとしていた。
 ギルドの登記を済ませて、戻ってきたフェイが、セランにウインクする。
 まるで「言った通りだろ」とでも言うような仕草に、セランは小さく笑った。
「それで、ギルド名は何て言うの?」
「ああ。セランには変てこな名前だって言われたんだけど―――」
 セランは仲間たちから目を逸らすと、窓の外を見上げる。
 視界を覆い尽くすどころか、アルカディア大陸のどこにいても見つけられる、聖なる大樹。何年間も願い続けたこの迷宮に、いよいよ挑むのだ。
―――だけど、今なら、足を踏み出していける気がする。
 フェイがギルド名を言ったからだろう、上がった背後のどよめきに、セランはこっそり苦笑いした。

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