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『世界樹の迷宮』シリーズ雑記。HPのごたごたも
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セカダンの自ギルドが結成されるまで
 
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 戦利品を持ったままマリアンの屋敷に戻れば、何故か箒を持っていたマリアンに出くわした。家主自ら掃除していたわけではあるまいが、泥だらけの有様を見つけるなり、掃くようにして水浴び場に追いやられる。
 身体を清めてから客間に行けば―――どうやらここはマリアンの“お気に入り”らしい―――マリアンとロッコがいた。ソファで寛いでる風なマリアンと、傍らで棒立ちのロッコが対照的だ。
 側に寄っていけば、マリアンに、まだ持ったままだった箒で小突かれた。文句を言う前にその柄が、床に広げられた“戦利品”を示す。
「魔物から採ったものは、ダーナの店に売ってこい。獣臭くて敵わん」
 半分外のような部屋だろうが、と思いつつ、フェイは黙っていた。が、顔に出ていたらしく、またはたかれる。
「―――ダーナで使わんものは、私が買い取ってやろう」
「どうするんだ?」
 さすがのフェイも、アスラーガにおけるダーナ工業の果たす役割の大きさは認識している。もっとも、フェイのアスラーガに関する知識は、ほとんど街ですれ違った冒険者からのものにすぎないが。
 マリアンはにやりと笑った。
「売るに決まっているだろう。ただし、アスラーガとは別の地域でだ」
「へ?」
「ご主人様の仕事の内容くらい知っておけ。私がただ戯れで、お前を迷宮に送っていると思っているのか? ……アスラーガの持つ資金などたかが知れている。外資がなければこの街は潤わん」
 マリアンの素性について、フェイはやっと理解した気がした。冒険者でも為政者でもなく、彼女は商人なのだ。
「なんで、こんな辺鄙な街で商売なんかやってんだ?」
「面白いからさ」
 マリアンはあっさりそう返答すると、フェイが次の句を継ぐ間もなく、「それはそうと」と話を変えた。
「―――随分苦戦したそうじゃないか。第一迷宮ごときで手こずっていては、先が思いやられるぞ」
 フェイは苦虫を噛み潰すと、ふと思い至って、より渋い顔になった。
「おい。なんでそんなこと―――」
「知っているのかって? 当然だろう。貴重な物資を奴隷が持ち逃げせぬよう、見張りを立てたのさ」
 フェイは思わず「あっ」と声を上げてしまった。
 マリアンは見下した目でにやにやと笑っている。腹立たしい、フェイは吐き捨てるように言った。
「あんなしょぼい剣と盾しかよこさずに、よく言うぜ! 大体、見張りなら援護なんかするんじゃねーよ!」
「援護?」
 マリアンは切れ長の目を刹那の間丸くしたが、すぐ元の余裕の笑みを浮かべた。
「お前、剣は向いていないらしいな」
 フェイはぐっと、言い募ろうとした言葉を飲み込んだ。
 代わりに出てきたのは、なんとも言い訳くさい。
「……だから言ったろ、冒険者なんてムリだって」
「そうは言ってない。……武器の使い方に問題がある。あまり実戦の経験がないのは、本当らしいな」
 そこまで見透かされているとは。黙り込んだフェイに、マリアンはなおも続けた。
「フェイ、盾をやれ」
「は? 今、武器の使い方に……」
「だから、盾をやれと言っている。周りを見る戦い方を学べば、及び腰も少しはマシになるだろう」
「及び腰ってなんだっ」
「この街における冒険者は様々な点において優遇されている。こと、ダンジョンを見ろ。“力尽きても生きて帰ってこられる”だなんて、アスラーガの冒険者くらいだ。それを可能にする力が、あの世界樹の近辺に渦巻いている」
 箒の柄が、夜闇の落ちた崖の向こう、燦然と輝く琥珀色を示す。
「―――だがそれでも、命を落とす者はいる。そして本当に“死んで”しまえば、二度と還ってくることはない」
 マリアンの紅い瞳は、琥珀を映すように遠くを見ていた。
 星の煌めきが、静かな流れを湛えた大河に浮かんで揺れている。大空と、大河と、そのどちらにも散りばめられた光を飲み込むほどの世界樹の存在感。
 あの麓に何があるのか。
 あの光は一体何なのか。
 冒険者という羽虫を惹きつけてやまない輝きに、マリアンはふと瞼を閉ざした。
「……もう一度言う。命令だ。お前は盾をやれ、フェイ」
 冷徹な声と目がフェイを見下す。
 歯噛みしながらも何も言えぬまま、フェイは戦利品の入った袋を引っ掴み、足早に客間を後にした。


 “不思議ノ迷宮”に足を運んで以来、マリアンの屋敷を出入りする自由を得たフェイの世界はまた広がりを見せた。
 マリアンの屋敷はほとんど人が住んでいない。身の回りを世話する女中が一人いるが、彼女も屋敷に住んでいるわけではなく、雇われだ。フェイが恒常的に姿を見るのは、マリアン以外にはもっぱらロッコくらいである。
 そのロッコもマリアンに付いて出かけることが多い。フェイはと言えば、用事を言いつけられるわけでもなく、一人置き去りにされる。何をすればいいのか途方にくれたものの、数日もすれば自分の置かれた状況が理解できてくる。“冒険者”として動くことが許されたのなら、街に出て、その通りに振舞えばいいのだ。
 初めにしたことは情報収集だった。ダーナ直売店で素材を売ったおかげで実入りはあったものの、フェイの手持ちは装備を揃える額に到底及ばない。一人で迷宮に潜るのが心もとないのなら、仲間を募ればいい。紹介を受けるのが手っ取り早い―――そんな調子で訪れた冒険者ギルドで、フェイはばったり、ベリトと再会する。
「おっまえ……!」
「フェイじゃないか」
 目を丸くしながらも、ベリトはいつもの調子で淡々と言う。
「―――無事だったのか、良かった。手がかりが何もなかったから」
「ベリトさん?」
 兄の影から顔を出したのは、白金の髪をした二人の娘。きょとんとしている彼女たちに向かって、ベリトはひらひらと手を振る。
「ちょっと手続きを待ってもらっていいかな。野暮用で」
「構いませんけど、その方は……」
「てめー、人が散々な目に遭ってたっつうのに、何してやがったんだ?」
 胡散臭いものを見る目を向ければ、ベリトは心外だと言いたげに肩をすくめた。
「お前と“別れて”すぐ、“保護”したんだよ。姉妹なんだそうだ」
 黒い外套を羽織った大人しそうな―――不安そうにフェイを見ている―――女性と、対照的に興味深々な視線を向けてくる、青いワンピースの少女。年齢層こそ異なるが、姉妹だという二人はよく似ている。
「あの、ベリトさん」
「ああ、彼は大丈夫。前に言っていた、私の探し人だ」
「えっ」
 姉の方が息をのむ。
 フェイはベリトを小突いた。
「おい。保護ってどういうことだよ」
「そのままの意味さ。追われていてアスラーガに渡らなければならないというので、ついてきてあげたんだよ」
「その、“図書館”の調査員だとお聞きしたので。お言葉に甘えて……」
 フェイは眉を上げた。
「“図書館”を知って?」
「はい。……祖母から聞いて。古今東西の“知識”を蒐集している組織だと」
「彼女たちの一族は“魔女”なんだ」
「魔女?」
「誤解です。特殊な能力なんてありませんから……ただ、病や怪我の治し方に通じているだけです」
「他所から来た連中に迫害され、住処を追われたそうだ。ここへは、よそ者に寛容な街だというアスラーガの噂を聞いて」
「それでどうして、冒険者ギルドなんかに?」
 石造りの重厚な建物内にひしめくのは、腕に自信があるのだろう、屈強な戦士ばかりだ。姉妹は浮いているどころか、好奇の視線を集めている。
「アスラーガの寛容は、観光客か、“冒険者”に対してだからです」
「この街はまだ生まれたばかりだ。街に住むつもりなら、街に貢献しないとな」
 もっともらしく言う兄に、フェイは憮然とした。
―――“図書館”の調査員であることは本当だ。ベリトがこの街を目指した理由は、この地方に存在する“琥珀の世界樹”、そしてその麓に点在する不思議のダンジョンに眠る謎を、知識として図書館に持ち帰ることなのだから。
 つまり、不思議のダンジョンを探索しなければならない。アスラーガは街を上げて冒険者を募り、開拓を奨励しているので、冒険者として潜り込むにはうってつけというわけだ。ベリトはたまたま拾った姉妹とギルドを組んで、迷宮に挑むつもりだったのだろう。
「何を不機嫌な顔している」
「うっせ」
 市場の“探し人”の広告を見回っていたことがバカらしくなり、フェイは吐き捨てた。
「まあ、合流できてよかった。お前、今までどこにいたんだ?」
「あっ……あー、その話をしねえとな」
「うん?」
 屋敷がある方角を見やり、フェイは額を抱えた。

***

「それで」
 “客間”に入ってくるなり不機嫌に吐き捨てた家主は、フェイたち四人が並んで座すソファの、背後―――ロッコをじろりと睨みつけた。
「―――誰の許可を得てここに人を入れた?」
「伺おうにも、主はいなかったのでな。俺の判断だ」
「貴様、後で覚えておけ」
 粛々と答えるロッコに向かって吐き捨てると、マリアンは怒気そのまま、フェイたちを見た。
 ベリトが立ちあがって口を開く。
「初めまして、私はベリト。連れがお世話になったそうで、その礼に伺いました」
「連れだと?」
 マリアンはまるで、ここで初めてフェイの存在に気づいたと言わんばかりに顔をしかめると、
「これか?」
「うん。残念ながら、“それ”です」
 フェイを指差すマリアンと、肩を竦めるベリト。
 てめーらいい加減にしろよとフェイは叫び出しそうになったが、その前にベリトが、微笑みを湛えたまま言葉を続けた。
「貴女がフェイを助けてくださったことには感謝している。しかし、奴隷というのはちょっといただけない」
「アスラーガに奴隷を禁じる法はない。もっとも、法整備がされていない、と言った方が正しいがな」
「この街の統括者、マガン殿は“そういった”商売は黙認される方なのか?」
「何だと?」
「または、清廉すぎて“奴隷なんていう存在”を知らないか……いずれにせよ、貴女がアスラーガで商売を出来なくなるのは困るだろう」
 淡々と紡がれるベリトの言葉に、しかしマリアンはにやっと笑うと、彼の正面のソファにどかりと腰を下ろした。
「私は貴様が勘違いしているような、奴隷商人ではないぞ。そうだな……お前の連れが私にいくら借金しているか、教えてやろうか」
「借金?」
「動けるようになるまでの治療費、生活費……諸々四十万エンだ」
「げっ」
 呻いたと同時にベリトは一瞬渋い顔をしたが、咳払いひとつ、もとの涼しい表情に戻る。
「……四十万か……フェイ、頑張れよ」
「うぉい!」
 フェイがいよいよ吠える。ベリトは何とも言えない、悟ったような顔で虚空を見上げる。
「まあ金銀財宝を当てなくても、返せる額ではあるし」
「てめー完全に他人事扱いしやがって! 薄情者!」
「だってぇ~」
 突然始まった兄弟喧嘩を煩げに見やり、マリアンが溜息を吐く。
「そういうわけだ。理解できたのなら―――」
「ま、待ってください」
 口を挟んだのは、ベリトの隣に座っているリコリスだ。
「―――私が身代わりになります。ですから、フェイさんは解放していただけませんか」
「はあ!?」
 声を上げたフェイだけでなく、ベリトやマリアン、ロッコですら目を丸くした。
 ただ一人のほほんと、リコリスの妹―――アスターが首を捻る。
「おねーちゃん、奴隷になるの?」
「私は何でもします。妹も……女中などで使っていただけませんか」
「おい―――」
「何か事情があるらしいな、娘。それを先に話せ」
「はい……」
 マリアンに促され、リコリスは故郷を追われてアスラーガに辿り着いたことを説明した。
「―――そうして、途方に暮れていた私たち姉妹を、“図書館”の調査員であるベリトさんが助けてくださったのです」
「あっ、おい」
「“図書館”?」
 マリアンの眉が寄ると同時に、ベリトが「あちゃあ」という顔をした。
「今、“図書館”と言ったか……」
 低く呟くマリアンの昏い視線に、フェイは明後日を向いた。
「言っとくけど、俺は“図書館”の人間じゃねーぜ」
「同じことだ! ―――いいか、私はこの世で一番あの連中が大嫌いなんだ! ロッコ!」
「俺も知らなかった」
「どいつもこいつも!!」
 立ち上がって髪をかきむしるマリアン。リコリスはきょとんとしている。
―――リコリスは知らないようだが、知識を吸収して回ることがミッションである“図書館”の調査員は、その過程で、旅先の経済や軍備を支える情報を得てしまうことが多い。そのため、諜報や情報泥棒のような扱いを受けることもある。中には、“図書館”の調査員の立ち入りを禁じる国や、それと知れた場合は死刑になる国すらあるのだ。
 マリアンのように商人の中にも、“図書館”を毛嫌いする者はけして少なくはない。顧客の信用を重んじるが故、情報を持ち逃げされる可能性を警戒しているのだろう。
 マリアンはびしっと、一方―――客間の壁がない方向―――を指さした。
「でていけ」
「つっても、そこ崖じゃ―――」
「まとめてでていけ。二度とこの家の敷居を跨ぐな!」
「待ってください!」
 リコリスはがばっとソファから腰を上げると、敷物に額を擦りつけた。
「―――私たちには行き場がないんです! お願いです、どうか奴隷にしてください!」
 目を白黒させるマリアンをよそに、フェイも負けじと声を張り上げた。
「おいっ! 俺だって、借金したままなんて寝覚めが悪いことできるか!! 奴隷は続けるからな!」
 ベリトが顔を覆う。ロッコとアスターは目をぱちくりとしている。
 マリアンは―――ひくひくと口角を上げて、呟いた。
「なんなんだお前らは」


―――結局。
 フェイの借金はそのまま増えも減りもせず、冒険者として働いて得た金から任意に返す、ということになった。リコリスたち姉妹はとりあえず、本当に街にとって信頼のおける人間であることを示せというマリアンのお達しで、当初の予定通り冒険者をやることになった。なお三人とも暇のあるときは、マリアンの屋敷を掃除しに来い、とも言われた。
 その日はそのままマリアンの屋敷を追い出されたものの、夜も更けていたため、四人はアスラーガ唯一の宿である“旅籠かすみ屋”に向かった。道中、とんでもないことが発覚する。
「金がない、だとォ?」
 へらへらと笑うベリトの胸倉を引っ掴み、フェイはそれをがくがくと揺すった。
「ンなわけあるか! 俺が五年かけて貯めてた金だぞ!」
「だってないもんはないんだよ~」
「馬鹿ベリト! なんで俺がいねえといっつもこうなんだよ!!」
 嘆きながらも、かすみ屋には到着してしまった。ダメ元で女将に宿泊費の後払いを申し出ると、冒険者は無償で泊まれるという返事が返ってきた。胸を張るベリトは知っていたのだろう。思い切りその足を踏んづけ、用意してもらった部屋―――雑魚寝部屋だそうだ―――に向かう。
 久しぶりに屋敷の外の寝床を使う。疲れた欠伸をするフェイに、リコリスが声をかけてきた。
「あの、今日はありがとうございました」
「へ?」
「マリアンさんを紹介していただけて、助かりました」
 あれを紹介とは言わないと思うが。言葉を飲み込み、フェイは頬を掻く。
「俺は何もしてないよ。リコリスさんたちだって、結局冒険者をやることになったし……」
「でも、“その後”が見えているのといないのでは、全然違います。ベリトさんとフェイさんのおかげです」
 にっこりと疑いのない笑みを浮かべるリコリスに、フェイもつられて口角を上げた。
「フェイでいい。リコリスさんの方が年上なんだろ」
「では私も。リコリス、と呼んでください」
「あたしはアスターね!」
 二人の間にひょこっと頭を入れて、アスターが割り込んでくる。その髪を優しく撫でると、リコリスは一礼し、妹を連れて女部屋へ去っていった。
「フェイ」
 ちょいちょいと手招きするベリト。嫌な予感がしつつ、周囲を見渡したフェイは、苦い顔で言った。
「お前、あんまり調査員だってこと、人に言うなよ」
「彼女たちは特別だ。利用できると思ったからな。第三者にばらされたのは想定外だったが」
 さらりと物騒なことを言いつつ、ベリトは続けた。
「お前こそ、情報は正確に、全て、伝達しろと教えただろ。四十万てなんだ。いきなり街の人間に弱みを握られてどうする」
「それは……仕方ねえだろ」
「マリアンさんが話の通じる相手で良かったがな。いいか、旅に出るときにも言ったが、足手まといになるようなら―――」
「切り捨てる、だろ。分かってるよ」
 任務の達成が最優先だ。肩を竦めたフェイの頭をぽんと叩くと、ベリトは廊下を進んでいく。
 その背中をぼんやりと眺めるフェイの頭に、先ほどリコリスがすれ違いざまに置いていった、小さな耳打ちが浮かんでくる。
―――お金のこと、責めないであげてください。ベリトさん、ずっとフェイさんを捜していらしたみたいですから。
 フェイは小さく嘆息すると、兄の後ろに続いた。


 翌日冒険者ギルドを訪れると、話は通っていると言わんばかりに紙が出てきた。ギルドの登録用紙であるようだったが、ギルド名には既に記載がある。訝しく、フェイはそれを読み上げる。
「“クッククロー”?」
「これはまた……」
「どういう意味なの?」
 苦虫を噛み潰す兄弟の間に、ひょこんとアスターが頭巾を生えさせる。それをフェイは肘置きにしながら(文句が聞こえるが無視だ)答えた。
「大昔の“世界樹”にまつわる冒険者ギルドの名前だよ。流行ったらしくて、一時期はどいつもこいつもこの名前だったとか」
「まあ、ありふれたものとして良いだろうが……ちと古いな」
「君たちはクイン一家の冒険者だろう?」
 ギルド長は肩を竦めた。派手な鎧ががしゃりと鳴る。
「―――知らないのか? 彼女たちが出資しているギルド“クッククロー”は元々大所帯でな。傭兵が多いせいか、恒常的に探索している者が少ない。まあ、戦える者を派遣してくれるだけでもありがたいのだが……」
「どこまで探索が進んでいるんだ?」
 ベリトの問いに、ギルド長は地図を広げる。
 最北端に琥珀の世界樹、その南には山脈と森を挟んで、大河が東西に走っている。大河の中心は、大地の裂け目に吸い込まれるような滝となっており、滝を挟んで、河の南西にアスラーガの街が、南東に“不思議ノ迷宮”がある。
「“不思議ノ迷宮”の北部、大河の付近には石灰棚がある。ここに採掘場を備えた“翠玉ノ華段”がある。君たちがまず足を運べるのは、この辺りまでだな」
「もっと北にも印があるぜ?」
「それは、そこまで辿り着くことが出来る実力がついてから説明しよう」
 ギルド長がもっともらしく言うので、フェイは口角を歪めた。
「―――さあ、今朝の迷宮行きの気球艇に乗るなら、さっさと手続きを済ませたまえ。言っておくが資金不足なのでな、気球艇は日にそう何度も出ていないぞ」
「くっそ」
 結局マリアンに“クッククロー”の名の由来どころか、事の次第を確認することもなく、フェイたち四人はその名を冠したギルドの門を叩くことになってしまった。

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