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『世界樹の迷宮』シリーズ雑記。HPのごたごたも
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※ツイッターハッシュタグ #リプもらったシチュエーションで推しCPをかく より
 赤ソド(レオン)とメディ子(アリル)

・注釈
時間軸はSSQ


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・注釈つづき
マオは二人の子ども(幼児)
メルはレオンの冒険者仲間で、マオより少し年上くらいの外見(ロリバド)

◆結婚式
「女の子の憧れよね」
 街外れの教会で花と人に包まれて、祝福されている白い二人。
 敷地を区切る柵に引っかかるようにしてそれを眺め、幸せのご相伴に預かっていたメルに言葉を落としていったのは、施薬院の女医師―――メルの記憶が確かなら、レオンの奥さん―――だ。
 彼女はメルの視線に気づくと、にっこり笑った。
「きれいね」
 彼女が指したのは、きっとあの幸せそうな花嫁さんだろう。
「うん」
 メルは素直に肯定した。
「……マオくんのお母さん」
「はい」
「の、結婚式は、どんなだったの」
 彼女は困ったような笑みになった。
「うふふ、してると思う?」
「……ごめんなさい、想像できない」
 この女の人はさておき、あの男がタキシードなんて着るのだろうか。
「そうよねー。私も想像できないわ」
 メルと同じように柵にもたれかかり、女性は溜息を吐いた。
 その心底困ったような表情に、メルは肩を竦める。
「なんだか、ごめんなさい」
「謝ることないわ。エトリアで結婚式まで挙げている人は珍しい方だもの」
「そうなの?」
「冒険者の街ですからね」
 何となく言いたいことが分かって、メルはふんふん頷いた。
「結婚式をした相手が明日にはいなくなるかもしれないもんね」
「ふふ、そうそう」
「あっ……また、ごめんなさい」
 この人は『結婚』まではしている人なのだ。
「いいのよー」
 笑顔を崩さないのは、言われ慣れているからか、余裕があるせいなのか。
―――そのあとは黙って、二人は二人の門出を見守っていた。


「っていうことがあったんだけど」
「はあ」
 腹が立たなくなるほど泥まみれにされた上着を夫から取り上げながら、アリルは言った。
 生返事を返してきた彼は、靴の泥だけは丁寧に落として家の中に引っこんでいく。以前、泥の足跡が点々と付いた床の上で息子がけんけんをしていたのを見てしまったせいだろうと思う。私が言ってもきかないくせに。この上着も、洗濯するのは誰だと思っているのだろう。
「メルちゃんっていうのね、あの子。お友達になっちゃったわ」
「家庭でも仕事でも女にいびられてるのに、女同士で提携しやがるわけか。お前らどんだけ俺をいじめたら気が済むんだ?」
「いじめるなんて人聞きの悪い。あなたがちゃんと人道にのっとった素行をしてるか、定期報告してもらうだけよ」
 レオンの胡乱な片目がアリルを見る。
「なあに?」
「……何でもない」
 何でもないと言いつつ、居間に向かうまでの間、ブツブツ独り言が聞こえてくる。
「あいつらトンデモ人間どもなんかと比べるべくもなく、俺の方がよっぽど常識的だと思うんだが……」
「まあ、昔よりだいぶ、そうね」
 振り返った彼の顔をぺちぺちはたいて、アリルは言った。
「人間してると思うわよ?」
「……そりゃどうも」
 好き勝手しているアリルの手を掴まえて、レオンは尋ねてくる。
「やりたかったか?」
「何を?」
「結婚式」
「……そうねえ」
 んー、と考えて、アリルは答えた。
「やっぱりね、あなたが白のタキシードを着ているところは想像ができないの」
「あっそう」
「タキシードっていうのがね、無理があるのかもしれないわね。……私も、ウェディングドレスをあなたの隣で着るのかしらって」
 不安定なエトリア情勢の中、最前線で戦う彼の一方で。エトリアの医療のすべてを司る場所で、彼女もまた最前線で戦ってきた。
 このひとなら大丈夫。私はいつまでもこの街で待っていられる。なぜなら彼が戦うのは、ほかならぬ私のためだからだ―――その確証が得られるより早く、二人の関係は子どもの存在をもって決着がついてしまっていた。
 私も彼も、二人だけで祝福される存在ではないのだ。マオが生まれたことで寄り添う口実ができた。どちらかといえば今も、お互いがお互いのために、お互いの戦場で戦っている姿こそ、隣に立つ姿としてしっくりくる。
 レオンは無言でアリルが持っていた自分の上着をひったくると、アリルの頭の上からそれをかぶせた。文句を言うより早く成立してしまった状態に、アリルは仏頂面で彼を見上げる。
「……泥がつくんですけれど」
「俺もこっちの方がいいかな」
「何が?」
「だって、ウェディングベールって上げるのめんどそうじゃねえ? ドレスの脱がし方なんて知らねえし」
「……そうね。あなたにロマンチックとかデリカシーとか、期待する方が難しいものね」
 甘んじて、降りてきた唇を受けながら、アリルは思う。
―――でも一度くらい、ドレスを着て。そしてあなたがタキシードを着て。みんながそれを見て笑うのも、きっと楽しいわ。
 もう少し落ち着いたら提案してみようかしら、と、アリルはいつでもずっと先のことを考えながら生きるのだ。

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