vol.6
某月某日
アイオーンさんがしばらくお休みされるそうです。何故かは分かりません。レオンに訊いてもはぐらかされてしまいました。
その代わりではありませんが、ブルームさんという方が僕たちの探索についてきてくださいました。普段はエトリアの学校で、地理の教師をされているのだそうです。彼の樹海に対する知識は、ノアさんも唸らせるほどでした。
それと、どうやらアリルの目的であった薬の材料は、キタザキ先生が他のギルドに依頼を出してしまい、既に採集されてしまった後だったようです。アリルは探索をやめてしまうのでしょうか? レオンに訊いたところ、これもまたはぐらかされてしまいました……何だか僕、とっても蚊帳の外な気がします……。
vol.7
某月某日
アリルが家出した、とキタザキ先生が大騒ぎをしていらっしゃいました。しかし、ノアさんにこっそり教えてもらったところによると、アリルは今金鹿の酒場で、住み込みで働かせてもらっているようです。
僕は酒場に行ったことがないのですが、ああいうところで成人すらしていないお嬢さんが働くというのはどうも……あまりよくないと思うのですが。キタザキ先生に教えてはいけないのだそうです。
そうそう、探索の方ですが、久しぶりに五人揃ったので地下七階まで降りてみました。地面に鋭い葉を持つ植物が群生しているところがあり、上を歩くとかなり痛いです。どうにかならないかと苦心したのですが、レオンが軒並み焼き払うという案を出したところですっぱりと諦めました。
vol.8
某月某日
ああ……書かなければならないと思うのに、ペンが上手く字を書いてくれません……。
とんでもないことをしてしまいました。
僕は、騎士として失格です。
もう少し、気持ちの整理がついてから、日記を書くことにします……。
vol.9
某月某日
どうやらアリルはキタザキ先生と和解したようです。
酒場から施薬院に帰っていったと、サクヤさんが仰っていました。彼女はたいそう働き者だったそうで、どこか残念そうでした。
僕のせいで、アイオーンさんが怪我をしてしまいました。幸い深くはなく、治るのに日数はかからないそうです。
しかし、僕が原因なのに変わりはありません……アイオーンさんは「君のせいではない」と言って下さいますが、僕はやはりまだまだ騎士として未熟なようです。
もっと鍛錬に励まなければならないと思います。
ところで、レオンはアイオーンさんが治るまでも、探索は進めると言っていました。どうやら、クッククローに入りたいと仰る方がいるとのこと。
正直、奇特な方だと思いますが……明日、ギルドに来られるそうです。楽しみですね。
vol.10
某月某日
新しくクッククローに入られた、イーシュさんは、とても奇特な方でした。
正直に言って、当初はあまり良い印象を受けなかったのですが、何度かお話を伺っているうちに、少しずつどんな方なのかが分かってきたような気がします。
なんというか……世間は広いんだなあ、と改めて気付かされました。
明日は第二階層の深奥、密林の王という魔物が居座る地下十階まで踏み込むことになりました。
が、その準備をしていた矢先に、なんとイーシュさんが僕たちの宿に転がり込んできました。なんでも、命の危険があるとかで……匿って欲しいとのことです。
もしかすると、以前イーシュさんを襲った暴漢のことかもしれません。その時は僕が居合わせたために、事なきを得たのですが……。