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『世界樹の迷宮』シリーズ雑記。HPのごたごたも
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※世界樹5のネタバレはないです


 ついったで、ふぉろわさんギルドの代表者を集めて大会議してみましたネタ

【お詫び】
夏コミ頒布の「せかごのひとたち」 にも収録されていますが、そちらのスペシャルサンクスに、日伐ともこさんのお名前が抜けておりました。正しい順番は、この記事の末尾のスペシャルサンクスの通りです。申し訳ありませんでした…
  
  
 最後にお借りした方のお名前を載せています。


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 冒険者ギルドも所謂『組合』である。定期的に、登録された全てのギルドが強制的に招集され、冒険者ギルドに関する取り決めを決議する場が設けられている。この会議のことを、誰が呼んだかギルド定例会という。
 議題はくだらないものから深刻なものまで多岐に及ぶが、この会議が面白いのは、本当に全てのギルドの代表者が一堂に会する点だ。『ティル・ナ・ノグ』のように評議会に太いパイプを持つ正統派ギルドは勿論のこと、『ブラフマン』みたいな盗賊まがいのギルドまで顔を見せる。何せ、連続二回欠席すると、ギルドの籍を抹消されるという重いペナルティがあるのだ。一応委任状を出して出席免除をすることは出来るが、『冒険者ギルド主催樹海大草むしり大会』の幹事を任される確率は、相当高くなる。
 さて、セランの所属する『クッククロー』も当然、定例会に参加する義務を負っているギルドのひとつである。代表者であるフェイは、とある事情からアルカディアの標準語の読み書きどころか、会話もあまり得意ではない。そのため、彼の通訳として、セランは毎回定例会に同行していた。
 しかし、慌てて冒険者ギルドの厳つい建物に駆けこんだのは、セランただ一人である。朝摘みのハーブを採りに行っていたせいで、遅刻してしまったのだ。息を弾ませながら、ブラニーの身長にしてはどでかい薄暗い廊下を、セランは走る。
 会議室に入りきらないのか、廊下にも冒険者がちらほら立っている。会議が始まっているようだ。竜騎士の証である赤いコートはそこらじゅうにいるが、黒髪の青年の後姿を見つけて、セランは駆け寄った。
「リー―――おぶっ」
 つんのめった勢い、その背中―――正確には、尻―――に顔面からぶつかりに行ったセラン。
 受け止めたアースランの青年は―――確かに背格好は良く似ていたが、フェイとは別人だ。
 少々鋭い目つきが振り返る。アイオリスには珍しいほど透けるように白い肌の青年はしかし、セランを捉えた途端、赤い目をぱちくりとやって、剣呑さを引っ込めた。
「ご、ごめんなさい。人違いです」
 慌てて繕うセランに、青年は人懐こい笑みで手を振った。精悍な顔つきだが、笑うと、フェイより少し年下のように見えた。
「おーい、セラン」
 フェイの声がセランを呼んだ。もう一度先の青年に頭を下げると、セランは会議室の入り口を、入ってすぐの壁にもたれかかっているフェイに近づいた。赤コートは着ておらず、シャツを腕まくりしたラフな格好だ。
「リーダー、もしかしなくても鶏の世話してた?」
 動物の匂いがするので指摘すれば、のんびりとフェイは答える。
「そ。気づいたら会議の時間になっててさ。中に入れなかったよ」
 今日の議題は、一階の釣り場の使用回数を制限することについて、冒険者に対する依頼についての苦情紹介、五階で全滅したギルドへの互助募金、任意参加の『二つ名』決め方講座、だ。
 始まったばかりだが、早くも最初の議題の意見のぶつかりあいが白熱しているらしい。進行役のギルド長が居る中心部が、遠くて議論の内容が聞こえない。仕方なく、セランは観察に徹する。
 今発言しているのは、女性が多いようだった。真っ直ぐで美しい長髪をくるくる指先で回しながら、はっきりとした口調で言葉を紡ぐアースランの少女が見える。その隣で、うんうんと頷いているのは、左右の瞳の色が異なる、ルナリアの女性。真面目そうに見えるが、適宜、手元のクッキーをつまんでいる。
 そこへ、ブラニーの女性が片手を挙げた。ギルド長に指名され、立ち上がった姿勢が、ブラニーに似つかわしくない武人の雰囲気を漂わせている。柔和な表情で述べられる意見に、先ほどのアースランの少女が納得したように頷いている。
 さらに、別のアースランの少女が口を開いた。二つ括りの髪を揺らして立ち上がった彼女もまた、ほっそりとした身体のわりに、前衛職なのだろうと思わせる空気を持っていた。身振りや口調が、どことなく、育ちの良さを感じさせる。
 ここ、アイオリスは多種多様な冒険者が集まっており、年齢層も広い。彼女たちの議論を、気難しそうな初老のアースランの男性が、腕を組んで髭を弄りながら見守っている。その向かいの席では、弓矢を携えた小柄な少女が目を輝かせて、議論に参加したそうにうずうずしている。
 勿論、積極的に参加していなくても、前向きに話を聞いている者たちも多い。山吹色の目をしたセリアンの少年は、退屈そうな顔で耳をぴくぴくさせているが、議論の中心にしっかり目を向けている。その隣では、アイオリスでは珍しく、鞭を携えていて立つ、三白眼のアースランの青年もまた、生気のない目ながら議論をじっと見つめている。
 そんな中、セランのそばで、へっくしんとクシャミをしたのは、人の好さそうな小柄なセリアンの少年だ。彼は八重歯を見せて照れ笑いをすると、再び議論の中心に目をやったが―――一方で、何かを気にするようにそわそわしている。早く帰りたいのだろう。その向こう側の窓際に立つ、暗い青髪のアースランの青年も、窓の外をぼんやりと眺めながら、くわ、と大きな欠伸をかみ殺した。
 議論はまとめに入ったらしい。うずうずしていた先ほどの少女が参入しようとしたところで、ギルド長が朗々と結論を述べた(少女はしなしなと席に戻った)。フェイが声をかけてくる。
「何だって?」
「ええと……今は決めない。次の定例会までにみんなの意見を集めて、一番多かった意見にしよう……だってさ」
「なるほどー」
 なるべく砕けた言葉でフェイに告げたはずだったが、納得の言葉を発したのは、側の座席に座っていた、黒髪のアースランの青年だった。セランが何か言うより早く、彼は配布された梗概冊子の裏に、楽しげに楽譜を書く作業に戻っていった。何だったんだ。
 もう一人、セランの要約に至極納得しているらしい、やや浅黒い肌のアースランの少女がいた。赤銅色の短髪を振るように頷きながら、手元のメモに何某かを書きこんでいる。目が合うと、相当きらきらした目で会釈された。あんたも何なんだ。
 ぷっと噴き出す声に、セランは背後を振り返る。薄金の短髪のルナリアの青年が立っていた。白い魔法衣の彼はごめんごめん、と言うように手首を振ると、小声で言ってくる。
「僕も、自分のギルドの子に説明するとき、同じように要約するなあと思ってね。大変だね」
 セランは力なく同意の笑みを浮かべた。
 フェイが頭頂を小突いてくる。
「聞こえなかった。彼、何だって?」
「聞こえなくていいと思うよ」
 セランの素っ気ない答えに、フェイは不服そうだ。
「すまない」
 次の議題に移ろうとしたギルド長に、立ち上がって声をかける者がいた。遠目にも整った顔をしているアースランの青年が、鋭い目つきを真っ直ぐギルド長に向けたまま、重々しく口を開く。
「―――手洗い休憩をもらえないだろうか」
 鎧の内側のギルド長の表情は読み取れないが、沈黙の長さから、その心情が計られる。
 やがて、ギルド長もまた重々しく口を開いた。
「……いいだろう」
「感謝する」
「だが次の議題は報告だけだ。それが終わったら休憩とする」
 次、と、ギルド長がページ数を告げた梗概をめくれば、それは酒場に置いてある、依頼票の写しだった。
 何となく見覚えのある文字に、セランは呻く。
 ギルド長は続けた。
「冒険者の中には、識字能力の低い者もいるだろう。そう言った場合、このように無理に意味不明な文章で依頼の完了報告を書くのではなく、代筆を頼むであるとか―――」
「冒険者の中には……ううん、分からん……セラン?」
 セランの要約を待っていたフェイが、当のセランの様子がおかしいことに気づく。
 いつの間にか近くに立っていた、先ほどセランがぶつかった青年が、同じくセランが言葉を交わした、白い魔法衣のルナリアの青年と、会話している声が聞こえる。
「書いてあるギルド名も……なんというか、変わってるね……」
「聞いたことがない……もしや少し文字ると、竜の名になるとか」
「ど、どうだろうね」
「リーダー」
 セランがフェイを呼べば、一斉に周辺の人々がセランを向いた。
 そういや、ここにいる人たちみんな、リーダーだっけと思いつつ、セランは「フェイさん」と呼び直す。
 そして、屈んだフェイに梗概を見せつけた。
「これ。リーダーの字じゃないね?」
「あー……それ、セランがいなくて。カーリグが書いたやつだ」
 黒髪を掻きながら、ごまかし笑いを浮かべるフェイ。
 セランは深々と嘆息した。
《ギルド定例会・終》

 

◆スペシャルサンクス(キャラクター登場順)◆
指参さん、天野さん、秋夜さん、シュンさん、春月灯さん、
イズミさん、デグネコさん、ゆうしまさん、かやざきさん、
ゲレンデさん、ゆめくらげさん、はっかさん、日伐ともこさん、
水茶屋さん、六舟しとねさん
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