・晴れ
「いい天気ですね」
「そーだなー」
「こんなところで、何をしてるんですか?」
木立ちに寝転ぶレオンを、クルスが見下ろしている。
ここは樹海の入り口に程近い場所で、視線を巡らせれば樹海守の兵士すら目に入る。剣戟の音ははるか遠いとはいえ、昼寝をするには些か穏やかでないであろう。
レオンは鬱陶しそうに片目で―――彼はそもそも、あまり両目を開けないが―――クルスを見上げた。
「お前こそ、何してんだよ?」
「いえ、僕は……」
そこで、懐からぬっと出てきた分厚い本に、レオンが眉を曇らせる。
「―――晴れているので、たまには外で読書でもしようかと思いまして」
「……それでここに来るんだ?」
「はい」
クルスはレオンの隣に腰を下ろすと、本を開いた。
なおも感じるレオンの視線に、彼は首を傾げる。
「何か?」
「いや……別にいいんだけどな」
レオンは呟くと、あらためて横になった。
・手
錬金術師の籠手は、重い。
冒険者とは、日に何時間も探索に時間をかけるもので。
探索中は当たり前だが、ほぼ常に武装をしていなければならないわけで。
「腱鞘炎、だね」
渋い顔を上げ、ウィンデールが告げる。
彼が離した右手に、鈍い痛みが走った。
ぞれに顔をしかめつつ、アイオーンは尋ねる。
「対処法は?」
「適度なストレッチ……かな。完全な治療法は無いよ。あとは出来たら安静にしておいて」
カルテにさらさらと何某かを書き込んでいくウィンデール。
「―――良く効く湿布を出しとくから、籠手の下に貼っといてね」
アイオーンは小さく頷くと、嘆息した。
・海*第三階層
「湖というよりも、海のようだな」
青い水面を覗き込み、アイオーンが呟いた。その背に、レオンは冗談交じりに声をかける。
「魔物に気をつけろよ」
「アイオーンさんは、海を見たことがあるんですか?」
アリルが首を傾げる。アイオーンが振り返って首肯したので、彼女は目を輝かせた。
「すごい! 海ってとっても広いんですよね!」
「ああ」
「この湖よりも?」
アイオーンは対岸に見える壁を、示した指でなぞった。
「海は端が見えない」
「へえ……想像できないです」
エトリアに海はない。街から出たことがないというアリルなら、見た事がなくて当然だろう。
「レオンは?」
今まで静観していたクルスに急に話を振られ、レオンは目を丸くする。
「俺? 何が?」
「海ですよ。見たことありますか?」
「ああ……ちょっとだけどな」
ふうん、と呟いてクルスは再び黙り込む。レオンは怪訝に首を捻った。
「なんだ?」
「いえ、何でもないです」
拗ねているようにも見える。不思議がっていると、ノアがクルスの背を叩いた。
「私もないわよ」
その一言で、ノアを見下ろしたクルスは驚いたように眉を上げ、そして口角を上げた。
「本当ですか?」
「ええ。私は北出身だから」
ノアはいつも通り淡々としているが、受け答えするクルスは明るい。彼の変化に、レオンは何となく納得して頷いた。
「いい天気ですね」
「そーだなー」
「こんなところで、何をしてるんですか?」
木立ちに寝転ぶレオンを、クルスが見下ろしている。
ここは樹海の入り口に程近い場所で、視線を巡らせれば樹海守の兵士すら目に入る。剣戟の音ははるか遠いとはいえ、昼寝をするには些か穏やかでないであろう。
レオンは鬱陶しそうに片目で―――彼はそもそも、あまり両目を開けないが―――クルスを見上げた。
「お前こそ、何してんだよ?」
「いえ、僕は……」
そこで、懐からぬっと出てきた分厚い本に、レオンが眉を曇らせる。
「―――晴れているので、たまには外で読書でもしようかと思いまして」
「……それでここに来るんだ?」
「はい」
クルスはレオンの隣に腰を下ろすと、本を開いた。
なおも感じるレオンの視線に、彼は首を傾げる。
「何か?」
「いや……別にいいんだけどな」
レオンは呟くと、あらためて横になった。
・手
錬金術師の籠手は、重い。
冒険者とは、日に何時間も探索に時間をかけるもので。
探索中は当たり前だが、ほぼ常に武装をしていなければならないわけで。
「腱鞘炎、だね」
渋い顔を上げ、ウィンデールが告げる。
彼が離した右手に、鈍い痛みが走った。
ぞれに顔をしかめつつ、アイオーンは尋ねる。
「対処法は?」
「適度なストレッチ……かな。完全な治療法は無いよ。あとは出来たら安静にしておいて」
カルテにさらさらと何某かを書き込んでいくウィンデール。
「―――良く効く湿布を出しとくから、籠手の下に貼っといてね」
アイオーンは小さく頷くと、嘆息した。
・海*第三階層
「湖というよりも、海のようだな」
青い水面を覗き込み、アイオーンが呟いた。その背に、レオンは冗談交じりに声をかける。
「魔物に気をつけろよ」
「アイオーンさんは、海を見たことがあるんですか?」
アリルが首を傾げる。アイオーンが振り返って首肯したので、彼女は目を輝かせた。
「すごい! 海ってとっても広いんですよね!」
「ああ」
「この湖よりも?」
アイオーンは対岸に見える壁を、示した指でなぞった。
「海は端が見えない」
「へえ……想像できないです」
エトリアに海はない。街から出たことがないというアリルなら、見た事がなくて当然だろう。
「レオンは?」
今まで静観していたクルスに急に話を振られ、レオンは目を丸くする。
「俺? 何が?」
「海ですよ。見たことありますか?」
「ああ……ちょっとだけどな」
ふうん、と呟いてクルスは再び黙り込む。レオンは怪訝に首を捻った。
「なんだ?」
「いえ、何でもないです」
拗ねているようにも見える。不思議がっていると、ノアがクルスの背を叩いた。
「私もないわよ」
その一言で、ノアを見下ろしたクルスは驚いたように眉を上げ、そして口角を上げた。
「本当ですか?」
「ええ。私は北出身だから」
ノアはいつも通り淡々としているが、受け答えするクルスは明るい。彼の変化に、レオンは何となく納得して頷いた。
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