「ずっと気になってたんだけどさー」
「何?」
ライはびしっ、とアリルの鞄を指差した。
「それ、何が入ってんの?」
彼女は目を丸くする。
「何って……お薬とか、探索中に使う道具よ」
「その割には、鞄がでかすぎねえ?」
「そうかな?」
「おーい、そろそろ昼飯にするぞー」
少し前を歩いていたレオンが手を振っている。他の仲間も立ち止まり、こちらを見ている。いつの間にか離されてしまっていたらしい。
二人が追いつくと、ルミネがてきぱきと指示をし始めた。樹海での食事は基本的に簡易な携帯食だが、ここは第三階層であるため、食品を解凍する手間が生じる。冷えたままでも食べられないわけではないが、魔物に対する用心の面でも、消費する体力の面でも火を用いた方が有益だ。
「待ってました」
ライは、第三階層で食事をしたことがない。そこにきてようやく温かいものを口に出来るという期待感は、一時寒さを忘れ、率先して準備にいそしむほどだ。
集めた薪を積んでいたところで、ふと覚えた疑問を口にする。
「あれ? でもアイオーンがいないのに、どうやって火を……」
「アリルちゃん、火をちょうだーい」
「はーい」
ルミネに元気な返事を返すと、アリルは鞄を探る。
そこからごとりと出てきた金属筒のようなものに、ライは息を呑んだ。
「そ、それ、何!?」
「え?」
ライが飛び上がるほど驚いているので、アリルとルミネは不思議そうな表情で、金属筒に視線を向けた。
「これ? これね、アイオーンさんが作ってくれた“懐炉”だよ」
「カイロ?」
アリルは笑顔で頷くと、続ける。
「樹海磁軸で移動するから、寒暖差で薬の入れ物なんかが結露しないように、アイオーンさんが作ってくれたの。ついでに、そこから火が取り出せるように……ほらっ」
アリルは何かの操作をして、その蓋を開いた。確かに、小さいが赤く上がる炎が確認できる。前半のうんちくはライにはよく分からなかったが、なるほど、火種ならばこれほどでかい入れ物でも理解できる。
が。
「アリル、鍋」
「はいはい」
続いてひょいと、小鍋がアリルの鞄から姿を現した。
「水はあるかしらー?」
「持ってます!」
「鍋の蓋くれー」
「どうぞー」
「携帯食は?」
「えっと……あったあった」
メンバーの要求に応じて、ほいほい出てくる魔法の鞄に、ライの目は皿のようになっていた。
「おい、手伝え、ライ」
「あ、うん……」
世の中って広いな、とライはしみじみと感じたという。
「何?」
ライはびしっ、とアリルの鞄を指差した。
「それ、何が入ってんの?」
彼女は目を丸くする。
「何って……お薬とか、探索中に使う道具よ」
「その割には、鞄がでかすぎねえ?」
「そうかな?」
「おーい、そろそろ昼飯にするぞー」
少し前を歩いていたレオンが手を振っている。他の仲間も立ち止まり、こちらを見ている。いつの間にか離されてしまっていたらしい。
二人が追いつくと、ルミネがてきぱきと指示をし始めた。樹海での食事は基本的に簡易な携帯食だが、ここは第三階層であるため、食品を解凍する手間が生じる。冷えたままでも食べられないわけではないが、魔物に対する用心の面でも、消費する体力の面でも火を用いた方が有益だ。
「待ってました」
ライは、第三階層で食事をしたことがない。そこにきてようやく温かいものを口に出来るという期待感は、一時寒さを忘れ、率先して準備にいそしむほどだ。
集めた薪を積んでいたところで、ふと覚えた疑問を口にする。
「あれ? でもアイオーンがいないのに、どうやって火を……」
「アリルちゃん、火をちょうだーい」
「はーい」
ルミネに元気な返事を返すと、アリルは鞄を探る。
そこからごとりと出てきた金属筒のようなものに、ライは息を呑んだ。
「そ、それ、何!?」
「え?」
ライが飛び上がるほど驚いているので、アリルとルミネは不思議そうな表情で、金属筒に視線を向けた。
「これ? これね、アイオーンさんが作ってくれた“懐炉”だよ」
「カイロ?」
アリルは笑顔で頷くと、続ける。
「樹海磁軸で移動するから、寒暖差で薬の入れ物なんかが結露しないように、アイオーンさんが作ってくれたの。ついでに、そこから火が取り出せるように……ほらっ」
アリルは何かの操作をして、その蓋を開いた。確かに、小さいが赤く上がる炎が確認できる。前半のうんちくはライにはよく分からなかったが、なるほど、火種ならばこれほどでかい入れ物でも理解できる。
が。
「アリル、鍋」
「はいはい」
続いてひょいと、小鍋がアリルの鞄から姿を現した。
「水はあるかしらー?」
「持ってます!」
「鍋の蓋くれー」
「どうぞー」
「携帯食は?」
「えっと……あったあった」
メンバーの要求に応じて、ほいほい出てくる魔法の鞄に、ライの目は皿のようになっていた。
「おい、手伝え、ライ」
「あ、うん……」
世の中って広いな、とライはしみじみと感じたという。
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